○国際的に見て、日本は最も「社会的孤立」度の高い国であるとされている。
○「子供の時期」と「高齢期」という二つの時期は地域への土着性が強い
○戦後から高度成長期をへて最近までの時代とは一貫して地域との関わりが薄い人々が
増え続けた時代であり、それが現在は逆に地域との関わりが強い人々が一貫した増加
期に入る。今はその入り口の時期である。
○都市におけるソフト面…人の行動様式や人と人との関係性。
ハード面…建物の配置や景観など都市の空間的な構造
○個人の都市…個人の都市には中心がない。
中心に大きな広場があって放射状の道路があって統一された一つの秩序があるような
都市の時代は終わった。
新しい都市は、小都市(地域)の集合体であり、中心のない環状都市だ。そこでは時間
コミュニティが交流の場を形成する。喪失したコミュニケーションを取り戻すために
は学校や家庭そして共有空間が重要で、従来の都市の公共広場にはその力はない。
…巨大な老人養護施設ではなく、さまざまな世代が交流しコミュニケーションするこ
とが可能なグループホームを。巨大な統合中学・小学校ではなく、小さな、多くの学
校や塾を。そして巨大な病院ではなく、多くの質の高い町の医院を。巨大な図書館や
公民館ではなく、住んでいる人もそうでない人も訪れることのできる小さな図書館や
劇場やサロンを。
○これからの福祉・医療関連施設は、これまでのような単なる「閉じた空間」ではなく
地域に開かれた文字通り「コミュニティの拠点」的な機能が求められている。
○福祉地理学…福祉政策と都市政策、まちづくり、環境政策、土地政策との連携や統合
の重要性が新しい意味合いを持ってくる
○成熟化・定常化の時代においては、成長を尺度とする座標軸そのものが背景に退いて
いくとともに、それと平行して各地域の地理的・風土的多様性ということが再認識さ
れ、新しい意味や価値を持ってくる
○クリエイティブ資本論…文化やファッション、情報や教育・研究などを含めて今後は
何らかの意味での創造性を伴った分野が資本主義での駆動因となり、かつそうした
分野が集積した地域が人々を吸引する場所となっていく
○クリエイティブなコミュニティの中心としての大学
○これからの具体的な政策…①都市計画や土地所有、住宅のあり方を含む都市政策
②社会保障や福祉国家のあり方に関する福祉政策
○経済の成熟化ということがもたらす新たな状況として
富の源泉が「フロー」から「ストック」に重点シフトするという事態
○戦後日本の住宅政策は
①公営住宅(賃貸)
②公団住宅(賃貸及び一部分譲)
③住宅金融公庫(持ち家への融資)を三本柱にして展開してきた。
しかし戦後ヨーロッパが福祉国家政策とパラレルに展開していったいわゆる
ソーシャルハウジング(社会住宅)ないし住宅の社会化という政策は進まなかった。
○戦後日本の住宅政策は経済成長のための経済政策の一環という性格が強く、
それが福祉政策ないし社会保障政策ないし社会政策の一部門として位置付けられる
という側面は希薄であった。
○今後都市政策やまちづくりの中に「福祉」的な視点を、また逆に福祉政策の中に
「都市」あるいは「空間」的な視点を導入することが必要。この場合の「福祉」
はかなり広い意味であり、①格差や貧困などの社会経済的要素もあれば②高齢者
や障がい者も含めて人々が歩いてゆっくり楽しめる等といった要素③様々な世代
のコミュニケーションや世代間の継承性といった要素を広く含んでいる
○中心部に高齢者住宅や福祉施設等を計画的に整備・誘導し、福祉の視点と地域再生
・コミュニティ活性化等の視点を複合化する
○…私は日本に戻ってから日本の社会に違和感を持つようになった。違和感というのは
要は生きづらさであった。敵意、閉塞感、無関心、険悪さ、非社交的で排他的。もち
ろん日本の文化には良い部分も多分にあるだろう。しかしこのネガティブな印象はそ
うした良い部分を相殺しても十分に余るほどのものだった。
○資本主義がその展開の極において、「働くこと」の動機付けにおける非貨幣的な価値
の重要性の高まや、コミュニティあるいは場所というものの意味の再発見といった新
たな局面に向かうという
○結局自分がやっていることは「人間についての探求」と「社会に関する構想」という
二つに集約されると感じているが、コミュニティというテーマはある意味で他ならず
この両者を架橋する、結節点のような主題の一つであると思われる。